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2015.12.06

FinTechの羅針盤

1.FinTechが熱い

特にこの分野はスタートアップ業界のみならず既存金融機関、更には政府をも巻き込んだ大きなうねりとなって人口に膾炙するようになっているのが大きな特徴である。

スタートアップ業界はしばしば、技術が社会に与えうる影響をワンフレーズで示すことで、そのインパクトを世の中に知らしめ、投資を呼びこむという手法を採用してきており、シェアリング・エコノミー、Internet of Things(IOT)やArtificial Intelligence(AI)といったワードもこうした例に連なるものであると考えられるが、こうした中にはxTechと呼ばれる分野がある。これは、既存の業態にこれまでとは異なる方法でテクノロジーを組み合わせたイノベーションを指すものとして、例えば教育(EdTech)や法律(LegalTech)などいくつか注目すべき分野があるとされる。この中の一つに金融(FinTech)が位置づけられる。

様々なxTechがあるなかで、日本においてFinTechが官民を巻き込んでこれだけ大きな潮流となっているのは、端的に、FinTech企業の出現がもたらしうる金融サービスにおける構造の変革と、これに伴う主要プレイヤーの交代の可能性を見て取っているからであると思われる。

FinTechの盛り上がりと同時に、なにをもってFinTechと位置づけるべきであるのかよく分からない、FinTechが何であるのかよく分からないのでその対処方法もよく分からないという声がしばしば聞かれるところである。

筆者は、主として金融事業者のM&A・組織再編や規制法対応を主要業務としつつ、金融は情報産業であるとの切り口から、テクノロジー業界、特にシリコンバレーを中心とする米国西海岸における技術投資の動向を、国内外のスタートアップ企業に対する法務サービスの提供を通じてウォッチし、その盛衰を目の当たりにしてきた。本稿は、これらの経験を踏まえ、FinTechというワードで語られる一連の金融イノベーションが示唆する中期的な帰結と、さらに、金融に限らず現在起こっている様々な技術・社会の変化の動向を踏まえ、金融の世界が進むことになる長期的な方向性と筆者が考えるところを読者諸兄に共有することで、金融に携わる人々が日々取り組まれている施策が、中長期的な金融のダイナミズムのなかにどのように位置づけられるかについて判断するための一資料としていただくことを企図するものである。

2.FinTech企業が目指すところ

(1) 事業構造の変革

FinTech企業の本質については、これまで他の媒体を通じて発信してきたところである。詳細についてはこれらの記事をご覧いただければと思うが[1]、端的にその結論を述べれば、過去10年ほどの間に他の情報産業、なかんずくコンテンツ業界において生じてきたことと同様の変革が金融業界に訪れるというものである。金融が情報産業であり、サービス提供業者とユーザーのマッチングにより成り立つ事業である以上、サービス提供業者がテクノロジーを駆使することで、これまでとは次元の違う方法で、よりユーザーに対して個別化したサービスを、従前よりも高い品質で、安価かつ効率的に提供することができるようになるであろうというのは、例えば音楽や動画の配信ビジネスで過去10年ほどの間に起こってきたことをつぶさに観察していればもはや明らかといえる[2]。

[1] 最も容易にアクセスできるものとして「FinTechの正体」(https://medium.com/@hakusansai/fintech%E3%81%AE%E6%AD%A3%E4%BD%93-d896f2be89ca#.16ucnjeev)がある。

[2] 例えば、Apple社は、iPodからiPhone、更にiPadに至るまでのセンサーの集合体であるハードウェアとともに、iTunesという音楽その他のコンテンツを販売するマーケットを築き上げることで、消費者がいつでもどこからでも、1曲から音楽を購入できる市場を創出した。コンテンツ業界では、更に定額制ビジネスモデルにまで進捗しており、消費者のコンテンツ消費体験の変革を続けている。同様の革新は書籍、映像などのコンテンツにも広がっており、コンテンツ業界の革新は、これまでコンテンツビジネスを担っていた既存事業者(音楽レーベル、パッケージ流通業者、書店、テレビ放送局等)の事業環境を一変させた。

例えば、アカウントアグリゲーションサービスやクラウドファンディングサービスといった新たな金融プラットフォームサービスは、このような文脈で金融ビジネスの革新を狙うものである。これらの事業は、ITの世界における事業構造の理解になぞらえて言えば、金融サービス提供の構造に新たなレイヤー(層)を設けて、これをプラットフォームとして、その上で既存金融機関、新たなサービスプロバイダが、ユーザーに対してサービスを提供できるよう、エコシステムを構築することに努めるはずであり、これに成功したサービスが最終的に勝者となる。

こうした動きは、テクノロジーの進展を基礎とする構造的なものであるので、規制の力をもってしても止めることはできない。価格とサービスの質の両面において、消費者の利便性が高まるソリューションが提供されるのであるから、金融サービスにおける消費者の利便性の向上を解決すべき重要なミッションの一つとして掲げている金融行政において、少なくとも総論においてこれを否定する根拠は見当たらないためである。また、金融規制は国際的なコンバージェンスが高度に図られており、世界各国で新規テクノロジーを前提とした金融サービスの革新を支える法的基盤が整備されつつあるなか、ひとり日本のみこれに対応せず、または特殊な規制を置いてこれらの導入を阻むことは不可能であるという事情もある。

(2) 事業の担い手の変更

また革新が、金融業界における主要プレイヤーの交代をもたらしうるというのもまた、各産業におけるイノベーションの経過に鑑みると見易い事実である。これらは主に、テクノロジーをベースとしたFinTech企業のコスト構造が、従前の金融機関のそれと大きく異なるという点に関連する。特に、レガシーシステムを持たないFinTech企業が、新たなテクノロジーに最適化した形でサービスを設計し、これに最適化した形で組織を作るとなれば、競争力の高いサービスを、これまでとは異なる顧客層に対して提供することが可能となる。既存金融機関は、既存の顧客のニーズに合わせる形で現状のシステムと組織を最適化してきたがゆえに、こうした新たな顧客層に対するサービス提供体制に追随することができない。また、既存の顧客層へのサービス規模からすると、それらのマーケットは取るに足りないものであるため、敢えてその分野で競争する必要性を認めないという理由から、振興のFinTech企業によるこれらの動きを放置する。こうしてサービス提供の経験を積み業務フローを改善・確立したFinTech企業が次に行うことは、顧客層の拡大、既存金融機関から見ると自らの主要顧客層の侵食である。

例えば、Lending Club社のようなクラウドファンディング事業者は、リーマン・ショック後の信用収縮の中で、既存金融機関にアクセスすることができない資金需要者に対する資金仲介を、インターネットによる資金の効率的なマッチングとデータを用いたきめ細かなリスク管理というテクノロジーを駆使することで実現した。既存の金融機関が放置した潜在顧客に対するサービス提供を通じて、テクノロジーと業務フローに磨きをかけたこれらFinTech企業は、次に既存金融機関の主要顧客に対して、同様のサービスの提供を開始した。信用力においては伝統ある金融機関に対して見劣りするものの、利便性や価格において優位性のある彼らのサービスは、主要顧客に受け入れられるところとなり、既存金融機関は、クラウドファンディング事業における資金提供側に回ることで、クラウドファンディング事業者との共存を図っている。

こうした動きは、これまで他業態において、様々なサービスで繰り返し起こってきた現象である。そこには共存がうまく成立した事例もあれば、新規事業者が既存事業者を買収するに至った事例、既存事業者側が新規事業者を取り込みつつ、自らを変革することで業態を転換しながら生き延びる事例も存在する。

イノベーションによる業界の構造の転換は不可避であるとしても、そのことが個別企業の盛衰を決定づけるわけではない。むしろ、自社の既存のリソースを不変の前提とせずに、変化を前提として自らの事業構造や組織をいかに柔軟に作り変えていくことができるかが決定的に重要である。その意味で、既存金融機関におけるFinTechへの対処の一丁目一番地は、自らの組織や事業構造の抜本的な改革であり、FinTech企業や既存のライバル企業の動向や提携戦略等の外部へのリアクションは二次的なものにすぎない。事業環境の変化による自社の中長期的な業績への影響の要因を外部に求め、外部的な方法によりこれに対処しようとするケースがしばしば見られるが、IBMや富士フィルムといった著名な例を挙げるまでもなく、自社の組織内改革を徹底して進めることなくしてこうした変化をチャンスとして自社の成長につなげることは難しいばかりか、コダック社のように大変革の波に飲まれてしまうことすらありうる。

3.FinTechが目指すところ

ここまでは、金融という一領域内部に目を向けて、どのようなコンセプトのもとに新たなサービスが起こるのか、それが金融業界の構造にそのように影響を及ぼしうるかということを述べてきた。しかしながら、FinTech(この用語自体がいつまでの寿命を持つかということを考慮すれば、テクノロジーによる金融サービスの革新と言い換えたほうが適切であると思われるが、本稿ではこれらを包括してFinTechと呼称することとしたい。)が示す長期的な射程は、こうした金融業界内の話にとどまらない。金融分野以外における社会構造の変革との相互作用において、金融サービスの変化の方向性を見定めることが重要であると考えられる。

経済の血液としての金融

市場主義社会にあっては、あらゆる経済活動には、その裏に合わせ鏡のように金融活動が存在する。財の交換に伴う資金の決済はもちろん、投資のための資金調達、日々の事業における仕入れと販売における入出金のタイミングの差を埋める資金繰り(流動性確保)、将来のリスクを管理可能な状態においておくための保険・デリバティブなどをはじめとして、金融活動は金融事業者が担わないものも含めて経済活動のあらゆるシーンに登場する。金融は経済の血液であると言われる所以である。この血液を効率よく循環させて、各産業分野の必要な箇所に効率よく金融サービスを行き渡らせるようにすることが、金融の抱えるミッションといえる。

大きく見て金融サービスは、情報の非対称性や情報獲得に必要なコストに伴う取引コストの存在を前提として、これを緩和するためのソリューションを提供してきたし、ここに金融サービスの価値の源泉、すなわちサービス対価を顧客に請求するための源泉があった。

あらゆる情報が無数のセンサーと通信技術を用いて僅少なコストで入手することができ、その集積・処理はクラウド・コンピューティングを通じて僅少なコストで実現でき、これらの分析も、分析の結果得られたリスク情報ないしこれを適用した金融アレンジメント(これは将来において一定の事象が発生することに対する統計学に基づく確率的な数値ないしそれを導くためのアルゴリズムということができ、金融機関の用語で言えば金融商品や金融サービスと呼ばれるものにほぼ相当する。)も、ビッグデータ処理技術(人工知能を含む。)を通じて僅少なコストで、かつ人間が行うよりも(確率的に)正確な回答を導き出すことができ、さらにそのサービスの需要者を、ネットワークを用いてより僅少なコストでサーチしてマッチングすることができるとすると、これまでの金融サービスが前提としていた情報の非対称性を中心とした情報非効率が、かなりの程度改善することになる。

このことは、社会の厚生を間違いなく改善するものであると考えられるが、金融という業態にとっては必ずしも幸福な事態ではない可能性がある。

しかしながら、このことは経済の血液としての金融が不要になるということを必ずしも意味しない。需要者の最終ニーズ同士が直接マッチングされるという究極の効率性が実現しないかぎり[3]、取引には媒体(それが政府に信用力を支えられた法定通貨であれそのようなものを欠く仮想通貨であれ)の介在が必要である。この媒体としての通貨の取扱いを業として行う点に、経済の血液としての金融が引き続き担い続けるべき役割の一つがある。

[3] 需要者(これは同時にサービス提供者でもある)同士の直接のマッチングの実現は、各需要者が提供することができる比較優位性のあるサービスが限られていることや、場所的・時間的制約のためになかなか実現が難しいと思われる。それよりも、端的に価値媒体、価値蓄蔵手段としての通貨を用いた取引のほうがずっと簡単である。

また、情報効率が高まり金融の効率が高まったとしても、なお時間差による資金ニーズのアンマッチやリスクファイナンスの必要性は残るはずであり、これらに対する金融ソリューションのニーズは引き続き残るはずである。

このうち後者の観点から引き続き必要とされる金融のニーズとその提供方法の革新は、上記2で述べたところの延長線で考えればよく、これについては筆者も前述の論考を含め、これまで様々な機会を得て発信しているところである。

ここでは前者にあたる、これらの金融サービスの根本にある金融システム、より端的に言えば決済システムについて敷衍してFinTechが目指す方向性について述べたい。

決済システム改革に関する議論に欠けている視点

決済システムの革新については、我が国でもこれまで様々な場面で議論がなされてきた。そのなかでも政策決定に最も近いところでなされている議論は、金融審議会における「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ」におけるそれである。本稿執筆時点において、同ワーキング・グループの報告書はまだ公表されておらず、公表済みのものでは、同ワーキング・グループの前身である「決済業務等の高度化に関するスタディ・グループ」における中間整理(2015年4月28日公表)[4]が、我が国の決済システムに関するアジェンダを取りまとめた直近の資料ということになる。

[4] http://www.fsa.go.jp/singi/singi_kinyu/tosin/20150428-1/01.pdf

中間整理では、リテール分野の決済サービス、企業分野の決済サービス、インフラとしての決済システムの改革につき、それぞれ日本と欧米諸国を中心とする世界の金融先進国の現状を比較したうえで、我が国の取組みの遅れを指摘し、欧米諸国をベンチマークとしたキャッチアップに努める必要があるという方向性の記載が一貫して示されている。

こうした方向性で決済システムの革新を政府が主導することは、グローバルな金融秩序が欧米を中心に形作られているという現実を見ると、やむを得ないものであり、またグローバルな金融競争に我が国が少なくとも負けないための戦略として現実的なものであるとの評価もできよう。他方、我が国金融機関がグローバルな競争にさらされる中で、時にはその効率性を犠牲にしてでも我が国の金融サービス利用者の独自のニーズに合わせ、比較的安定した金融システムと、その着実の運用な結果得られる金融機関に対する国民の高度な信頼といった社会関係資本を築き上げてきた既存金融機関にとっては、必ずしも納得性の高いロジックとはいえないのではないかと思われる。

すなわち、既に一定の高度化と金融サービスのグローバル展開を成し遂げた我が国の金融業界において、欧米キャッチアップ型のロジックによる政府主導の決済システム改革という図式は、少なくとも既存金融機関にとっては時代錯誤的に映っている可能性がある。

そうではなく、今後の我が国を含めた社会が目指すべき方向性が何であるのか、また社会がどこに向かって進んでいるのか、こうしたものについての認識を前提として、新しい産業社会における決済サービスのあり方を議論するのであれば、既存金融機関を含むより多くの関係者の賛同を得て、前向きな試みにつなげられるのではないかと思われる。

将来の我が国の産業像

インターネットテクノロジーの進展は、第一に、情報流通やコミュニケーションに関する既存の事業の前提を大きく変えた。これはインターネットにおける19世紀後半における産業革命期における電報や電話の発明に相当するコミュニケーション面における革新であり、もはや多言を要するものではないであろう。

第二に、ネットワークテクノロジーは、ロボット技術との組み合わせにより、更に、物流業や製造業を情報産業に近しいものに変革しつつある。すなわち、物流業や製造業は、モノの存在を前提とするがゆえに、一般的に言って情報産業のような事業モデルとは異なる事業構造であると考えられていた。しかしながら、第一に、ネットワークに接続されたロボットを利用したモノの生産と移動の自動化が実現することで、製造業と物流業における一単位の生産増のために追加的に必要な費用が極小レベルに低減する。第二に、これらのネットワーク化された生産・物流の仕組みは、クラウド・コンピューティングにおけるサーバのように、各事業者が自ら所有する必要はなく、これらにアクセスして必要な機能を利用するという形態が進捗する。ファブレスの製造業やITを活用したロジスティックスリソースの共有の仕組みは、19世紀における鉄道網による物流コストの削減や20世紀初頭における製造技術の革新をロボットとネットワーク技術をもって革新するものと見られる。

第三に、ネットワークテクノロジーは、効率的な小型発電・蓄電設備との組み合わせにより、エネルギー供給のパラダイムを転換させつつある。すなわち、情報産業も製造業も物流業も、いずれもこれを稼働させるためにはエネルギーが必要である。ここにおけるエネルギーは、仕組みを回すための動力という意味で、いわゆる動力エネルギー、端的には電力に加えて、人力(労働力)も含むところのエネルギーを指し、人工知能やロボットなどのテクノロジーと電力の組み合わせにより人と代替可能であるところの、生産のためのリソースを意味する。事業者にとって、動力エネルギーはこれまで、いずれかから調達してくるものであり、かつ寡占的な供給者が中央集権的なシステムによって管理してきたリソースであったといえる。これが各事業者や消費者がそれぞれ生産し、蓄電と組み合わせながら、ネットワークを通じて融通しあう分散型供給体制が敷かれるとすると、自家発電と効率的なエネルギーネットワークからの供給と相まって、エネルギーをシェアしている形となる。これらは、20世紀型のエネルギー供給のあり方を変更するとともに、情報産業、製造業、物流業を問わず全産業におけるこれまでの前提を変更しうる潜在的な力を持つ。

これらにおいて見られるのは、あらゆる産業がネットワーク化・分散化したインフラに支えられるということと、リソースに対するリアルタイムなアクセスを前提とした産業形成がなされるということであり、IOTといわれたりシェアリング・エコノミーといわれたり、更にはインダストリー4.0(インダストリアル・インターネット)といわれたりするものは、こうした社会インフラを創造することを目指した活動として、それぞれ位置づけることができる。

FinTechが目指す姿

金融は経済の血液であることからして、こうした全産業が向かいつつある方向性と無関係にそのあり方を議論するのはナンセンスである。更にいうと、金融は、こうした新しい産業社会のなかで金融情報を流通させ、経済活動の表にあるモノや情報の取引を決済していくものであり、そうであることが求められる。これを実現するために、既存の決済インフラを一体どのように改革していなかければならないのか、ということを真剣に検討することが、経済の血液であるところの金融を担っている金融機関の使命といえる。その意味で、決済インフラ改革は、政府によってやらされるものでもなければ、欧米に追随することを目的として行うものでもない。人口減少の大きなトレンドのなかで、地方(これは上記のパラダイムではエネルギーの一大供給地帯である。)を活性化させ我が国の国力を維持するために、我が国を母国とする金融機関が総力を上げて取り組むべき課題なのである。

ネットワーク型・分散型の決済システムで、モノやサービス、エネルギーを含めた商流の動きとリアルタイムで決済することができるテクノロジーとして、ブロックチェーン技術がある。モノやサービスやエネルギーの取引内容をブロックチェーンに書き込み、資金決済を条件としてこれらが移転することとすることで、情報取引のみならず、製造や物流やエネルギーのリソースの取引も実現することができる。しかも、取引には人が介在することなく認証が可能であるため、取引コストはゼロに近く、いかなる小規模な単位であっても、これらの取引の決済が可能とされている。

ブロックチェーンについては、いまだビットコインとの概念の混同がなされている向きもあるが、ブロックチェーンを考える際のビジネス上の視点については、拙稿「ブロックチェーンの正体[5]」をお読みいただきたい。同拙稿に記載していないブロックチェーンの特徴として、システムの強靭性が挙げられる。中央集権型の決済システムは、システム攻撃や大量の処理要求により中央システムが停止すると、システム全体がとまってしまう。これに対し、ブロックチェーンによる分散型システムにおいては、決済情報を各ノードが共有し、リアルタイムで同期しているので、あるノードを構成する特定のシステムが止まったとしても、他の動いているノードが要求された処理を継続して行うので、ネットワーク全体の機能が停止することはない。システムのメンテナンスに対する考え方や、サイバーセキュリティ対策への考え方を大きく一変し、これらは基本的に現行システムよりも大幅なコスト削減を実現するものといわれている。

[5] http://jp.techcrunch.com/2015/10/19/blockchain/

こうした新しい産業社会のパラダイムに沿った形の決済インフラが提供され、これをプラットフォームとして、そのうえに流通する様々な情報を駆使した新しい金融サービスが提供される、というのが、FinTechが長期的に目指す姿にほかならない。この姿は、我が国の国力維持の観点から必要とされるものであるので、担い手が誰であるか、どのような事業者の組み合わせによって提供されるかは大きな問題ではない。この姿を実現することが我が国経済に金融という血液を供給するために必要であると信じる事業者が、政府と一体となって進捗させていくべきプロジェクトであると考える。

産業構造の変化とFinTechの関係について

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