前回の先買権の解説に引き続き、本稿では共同売却権と強制売却権を取り扱うことといたします。
共同売却権
共同売却権とは、これに服する既存株主が第三者に株式を売却してエグジットを図る場面で、持株比率に応じて自らの株式を売却するよう求めることができる権利をいいます。しばしばtag-along rightsなどと呼ばれたり、売却参加権と呼ばれたりすることがあります。シリコンバレーの実務では、co-sale rightsと呼ばれることが多いように感じますので、ここでは共同売却権と呼んでご説明します。
共同売却権が想定している局面は、創業者やその他の重要な株主が行う株式売却に投資家が参加するという局面です。すなわち、創業者やその他の重要な株主が一定の割合の株式を保有している場合で、第三者が、これを取得すれば会社の支配権に重要な影響を与えることができるという場面を想定した場合、この一定のブロックを取得することできさえすれば、他の投資家はそのままでも会社の支配権に重要な影響を与えることができることになります。
この場合、投資家が共同売却権を保有していれば、創業者らの売却に参加することで、自らエグジットの道を確保することができることになります。
誰が共同売却権に服するか、共同売却権に服するべき株式はどの範囲か、誰が共同売却権を保有するか等についての議論は、先買権でご紹介した議論と基本的に同じですので、「タームシート解説⑤-先買権」の該当箇所の解説をご覧下さい。
強制売却権
強制売却権とは、一定割合(通常は過半数)の株式保有者が第三者に会社を売却することにつき賛同した場合、創業者や経営陣などの重要な普通株主は、この売却取引に賛同することを義務付けられる条項です。しばしばdrag-along rightsなどと呼ばれることがあります。
これは、投資家主導のエグジットが講じられた場合に、経営陣や創業者等がこれに反対することを封じる条項ということができます。経営陣の提案するエグジットについては、優先株主である投資家は、拒否権行使という形で自らの権利を守ることができるわけですが、これに加えて、投資家主導のエグジットの提案を認めると共に、一定割合の持株割合を持つ投資家の共同提案である場合には、経営陣に拒否権が認められることなく、創業者等の株式を含めて強制エグジットされてしまうことになります。その意味では強力な権利であり、創業者としては、このような権利を投資家に与えてよいものかどうか、よく検討する必要があります。