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2015.11.19

「はじめの一歩」から間違えないために

その事業は「ベンチャー企業」を目指せるか

このサイトは、ベンチャー企業が事業を成功させるためにはどのように資金調達を行うべきかということを中心に、起業家の皆さんが知っておくべき主として法務面の基礎知識について解説するものですが、ご説明を始めるにあたり、このサイトが念頭においている「ベンチャー企業」とはいったい何を指しているのかを明確にしておくことがとても重要だと考えています。

なぜなら、このサイトが念頭においていないタイプの「ベンチャー企業」の起業家にとっては、このサイトの解説があてはまらない部分が少なからずあるからです。同じ「ベンチャー企業」という言葉を使っていても、想定する企業のタイプが違う場合には、方向違いの議論となってしまうでしょう。そのような事態に陥らないよう、一番最初にこの点について触れておきたいと思います。

「ベンチャー企業」という言葉はとても多義的です。何か新しいことにチャレンジする中小規模の会社が自らを「ベンチャー企業」と規定することもあるし、個人事業主が「ベンチャー企業」を名乗る場合もあります。

「ベンチャー企業」という言葉には、リスクをとって新しいことに挑戦する、という前向きなニュアンスを伴うため、そのような特徴を持つの企業を総称してベンチャー企業というのだ、というのが、おそらく広義の「ベンチャー企業」という言葉の意味だと思います。最近、インターネット経由で提供されるサービスであるという特徴をもってASPサービスもホスティングサービスもひっくるめて「クラウドサービス」と名乗るものも増えてきたようですが、これに似ている面があるような気がします。

このサイトでは、これよりももっと狭い意味での「ベンチャー企業」を取り扱っており、このサイトのメインテーマである資金調達の側面からベンチャー企業を捉えています。

ベンチャー企業に対するリスクキャピタル供給のメインプレイヤーは、ベンチャーキャピタル(VC)です。確かに、ベンチャー企業を含む中小企業に対しては、ベンチャー育成や中小企業保護を目的とした政府や政府系金融機関などによる補助金や低利融資といった制度もあり、ベンチャー企業としては、これらも資金調達の一手段として検討することも考えられるでしょう。けれども、フィナンスの側面から見れば、ベンチャー企業という極めてチャレンジングなプロジェクトに対して、これを正当に評価し、リスクキャピタルを提供する主体としては、やはりVCを中心に考えるのが正しいアプローチです。

そこで、このサイトでは、VCによる資金調達を志向する企業を「ベンチャー企業」として想定します。当然のことながら、VCは、投資に対するリターンを期待して投資しますから、VCによる資金調達を志向するためには、その企業はVCの投資基準にあう成長戦略を持っていなければならないことになります。つまり、このサイトにいう「ベンチャー企業」は、少なくともVCが共通して持っている投資条件に合致した事業計画を持っている必要があることになります。

VCが投資の見返りとして期待する「リターン」は、配当ではなく、株式の売却益(キャピタルゲイン)です。VCがベンチャー企業の株式を売却益が出るように売却することが出来る機会は2つ、新規株式公開(IPO)とM&Aです。そして、VCが組成するファンドは、存続期間が10年程度と短く、その1~2年前から株式の売却活動に入るので、その前に株式を売却することができなければなりません。つまり、VCが投資対象とする会社は、株式投資から数年以内にIPOを行うか、他の会社に売られる見込みがある会社であることになります。

以上をまとめると、このサイトが想定する「ベンチャー企業」とは、他人の資金をテコにして短期間に高成長を遂げることを計画する会社であって、期間中に事業が売却されることも想定(覚悟)している会社をいいます。

逆に言うと、IPOなどせずに創業メンバーだけで長く事業を続けたいという会社や、会社は創業メンバーのものであって万が一にでも売られてしまうなどもってのほかと考えている会社は、このサイトが典型的に想定している「ベンチャー企業」ではないということになります。

もちろん、VCにもいろいろな種類があり、多産多死を想定してできるだけ多くのアーリーステージの会社に少額のシードマネーを投下しまくるもの、まずは投資させてもらえないと話が進まないとばかりにエグジットについてあまり厳しいことを言わないもの等々も存在すると聞いています。けれども、VCがファンドである限り、以上に述べたような制約がどんなVCでも厳然として存在します。そして、ファンドのマネジャー(GPと呼ばれる。)は、投資家に対してリターンを還元する重い責任を負っていますから、この責任を果たすため、近い将来、投資した資金の現金化を投資先企業に求めてきます。したがって、ベンチャー企業は、いやしくもVCから資金調達を行う以上、そうした事態が起こりうることは常に想定しておかなければなりません。

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