シェアリングエコノミーの現状と課題について、内閣府のIT総合戦略室に意見書を提出しましたので、こちらでも共有させていただきたいと思います。
シェアリングエコノミー関連サービスの開発状況について
2016年11月にシェアリングエコノミー検討会議においてとりまとめた中間報告書は、「専門業者ではないリソースの保有者とこれにアクセスしたい者をマッチングすることによって、有休している既存のリソースの稼働率を高めるとともに、専門業者ではないユーザー同士がインターネットを通じて直接つながることで、従来のビジネスモデルにはないコミュニケーションが生まれ、これが単にリソースの有効活用にとどまらない新たな価値を創出する」というシェアリングエコノミーの価値観を世の中に広めるとともに、このようなサービスの創出に政府が前向きに取り組んでいるというメッセージを打ち出しました。これにより、サービス開発を担う民間事業者は、シェアリングエコノミーの価値観を様々な分野に応用したビジネスの創出を図っています。
当初は、スタートアップ企業によるアイディアがその大宗を占めましたが、近時においては、自らリソース獲得のために多大な投資をすることなく、他者と協力して他者が保有する既存のリソースを活用することで、自社の既存ビジネスが抱えている問題点を解消することができる可能性に着目した大企業においても、シェアリングエコノミーのモデルを活用したサービスの検討がなされている状況です。
これには例えば、加盟店のニーズを満たすため、加盟店網のオーガナイザーが自らリソースを獲得して提供するのではなく、シェアリングエコノミープラットフォームを提供して加盟店が必要なリソースをインターネットを通じて獲得しやすい環境を整えるといったことが考えられます。そのほかにも、既存の顧客のニーズを満たすため、自らがこれまで提供していないリソースについて、自らリソース提供をせずに取引プラットフォームを提供し、リソースの保有者とのマッチングによってこれを実現することで、顧客エンゲージメントを高め、自らの事業価値の向上につなげるといった発想から、既存の大企業がシェアリングエコノミーの可能性を追求する相談事例が増えています。
また、シェアリングエコノミーサービスは、プラットフォーム事業でありますので、プラットフォーム上には、当初想定していたリソースの提供者と需要者のマッチングのみならず、そこから生じた新たなニーズを解決するサービスも生まれており、経済圏(エコシステム)の拡大が経済にプラスの影響を与えていると承知しております。これには、大きく2つの傾向が見られます。
① マッチングによって生じた取引関係に関連して、ユーザーに生じる別のニーズに対して、そのニーズを満たすリソースを持つ別のプレイヤーとのマッチングを図ろうとするモデル。
これには例えば、民泊プラットフォームが、宿泊先においてユーザーが求める現地の様々な体験を提供するため、体験教室等とのマッチングを図るケースがあります。
② マッチングの発生を促すためのサービス。これは、ユーザーの獲得とともに、プラットフォーマーが収益を実現するために重視する、潜在ユーザーが実際に取引を行う比率(コンバージョン率)を高めることに繋がる施策であり、典型的にはプラットフォーム上での保険の提供といったものが挙げられます。
シェアリングエコノミーモデルの難所
中間報告書が出した答え
特に法整備が相当程度進んだ日本を始めとする先進国が、このような従来の発想の転換を迫るようなビジネスモデルのイノベーションに対して、これを前向きに受けとめていくにあたっては、(a)このようなプラットフォーム型のモデルが既存の法令において想定してないということに対する評価(想定していない以上はやってはいけないということなのか、ダメであると規定されていない以上はやっていいということなのか)と、(b)これに対して具体的にどのように対処すればよいかについてのガイダンスが不可欠と考えられます。
- 既存の法令が想定していないということがそのようなサービスをやってはいけない(=違法である)ということを意味するものではないこと
- 民間事業者自身が弁護士等を活用して、自らのサービスにつき明らかな法令違反がないことを調査した上で、その根拠を明確化することで、自らのサービスの適法性をアカウンタブルな状態にしておけば、そのようなサービスを展開することが許されること
を明らかにしました。
三権分立のもと、行政庁は法令解釈の最終権限を持つものではなく、また自ら法令策定した当初にそのようなサービスは想定していなかった以上、そのようなサービスを行うことが既存の法令に違反するかどうかの判断において、行政庁は民間事業者と対等の関係にあります。したがって、民間事業者は、自らの責任をもって法令を解釈し、自らのサービスが法令違反ではないことの根拠を明確にすることができるのであれば、司法権においてこれが違法であると確定されない限り、この民間事業者の判断が誤っているという評価にはならないと考えられます。
中間報告書は、この理をわかりやすい形で明確に示したものとして、イノベーションの実務において高く評価されています。